Esprit ~精神~

8年の欧州での修業を終えて帰国してから、20年の月日が流れました。その間に世界のダイニングシーンにおけるフランス料理を巡る環境は大きく変わりました。一口にフレンチといっても古典からイノベーティブ(革新的)な料理まで、限りなくその守備範囲は広がっています。

 

さまざまな国を旅し、日本国内もいろいろな地を訪れ、志の高い生産者や、才気に富んだ料理人との出会いを重ねてきました。今の私の料理はそうした経験の集大成です。

 

珠玉の食材、先人の知恵、市場の賑わい、心にしみる景色・・

 

宝もののような断片を、フランス料理の技法を用いて自分の中に落とし込み、新しい表現の料理を考える時間へと推移させる。それは店名であるEdition =編集という作業なのかもしれません。

 

でもその前提にあるのは、一口でお客様の笑顔を引き出すことができる美味しさです。もちろん美味しいの感覚には個人差があります。けれど、絶対音感に近い美味というものがあると信じています。

少しでもその域に近づきたく、一皿一皿、そこへ向かっていく努力を惜しみません。

 

とある日の料理。。

発酵タピオカの粉を用いて旨みを引き立てたグルテンフリーのチュイル。

 

生命を育んだ清らかな海をそのまま器に閉じ込めた牡蠣の冷製。

 

うにの焼きプリンの味付けは単なる「塩」ではなく「かぜ水」という、岩手県の郷土食材。

それはうにを塩漬けにしたときに浸水した、うに風味の塩水です。

 

岐阜県産の鮎は丸ごとコンフィにしたものに、米粉をまぶして香ばしく焼き上げることで、鮎の塩焼きを思わせます。

 

そうした料理を季節に応じて編みながら、1つのコースにしてお出しします。一口ごとに驚き、喜び、わくわくしながら食べ進んでいただければ、これほど嬉しいことはありません。

奇を衒うわけではなく、けれど、古典の力の上に安穏とするのでもなく、常に理にかなった進化を遂げていきたい。

 

世界中の皆様の1人でも多くの方々に私の料理を召し上がっていただきたい。。

これが私の目指す「Edition Koji Shimomura」なのです。

 

 

オーナーシェフ 下村 浩司